トランジション~終わりから始まる自分ブランディング~

本当の私は、こんな感じじゃないはず。でも色々あってね。仕事のこと、家族や親のこと、健康のこと。。。
年齢を重ねる中で、そんな気持ちになることも多いですね。
思うに任せないときは、何か、環境や状況の変化があるのかもしれません。
人生には、何度となく「転機=トランジション」が訪れます。
意識せずに通り過ぎてしまったトランジションもあれば、能動的におこしたトランジションもあると思います。
そして、それはいつも喜ばしいことばかりではなく、特に年齢を経ていくと、トランジションで道に迷ったり、立ち止まってしまうこともしばしば。
もっと軽やかに転機を乗り越えて、いつも「今の私が一番自分らしい!」と思えるには、どうしたらよいのでしょうか。

目次

つぎの私は、もっとオモシロイ!?

私の仕事のミッションである<つぎの私は、もっとオモシロイ!>。
これは、明日の私に期待する!ワクワクする!ということなのです。
どうして、このようなミッションを掲げているかというと。。。
明日の私は、どうしていいかわからない。
そんな時期があったからなのです。

35歳で起業。
予想を遥かに超えるスピードで事業が軌道に乗りました。
起業は、離婚と同時でしたが、30代後半で再婚、40歳で出産、同時に、海、山が見える家を建てました。
取材や、出版の依頼がひっきりなし。
赤ちゃんを抱えながら仕事をこなす日々は、流行り始めた「女性起業家」のちょっと先ゆく成功事例。
様々な起業家イベントにも呼んでいただきました

その頃の私は、どこから見ても、何もかもうまくいき、幸せそうだっと思います。
ところが。。。。

トランジションの不幸な見逃し

私は、完全にライフステージが変わっていました。
大きなトランジションを迎えていたのです。
仕事だけをしていこうと思っていた矢先の、妊娠、高齢出産。
子供ができることを予想せず、不便な場所に建てた家。
思った以上に、忙しい子育て。
そして、思った以上に、本当に子供との時間を大切にしたいという想い。。。

ところが、当時の私は、自分のトランジションを、まったく無視していました。
今までやってきたことを今まで通りやるのがいいのだと。
期待されていることに応えるのが正解なのだと。
できないのは、自分の能力や魅力がないのだと考えたのです。

小さな子供をあずけて、往復4時間東京へせっせと通い、新しいコンテンツをつくり、本当は大切にしたい子供との時間を持てず。。。
その結果。。。

体調を崩しました。
心身に不調をきたし、以降10年間苦しむことになります。
顔は、真っ赤に腫れてしまい、胃の不調で固形物が飲み込めないときも。
そして、自分がおこなった様々な決断に、ただただ「後悔」する日々でした。

<終わらせる>という<始まり>

50代になり、徐々に体調が復活し、自分らしい仕事ができるようになった私。
でも、あの苦しかった40代から、もっと早く脱出するには、どうすればよかったのでしょう。
そのひとつの答えとなる考え方を得ることができました。

それは。。。。

終わらせること

40代の私は、自分の環境や、心境の変化をきちんと認識し、「今までどおりにいかない」ことに向き合うべきでした。
そして、できないことや、それまでの考え方を、一度捨てること=終わらせること をすべきだったと思うのです。

できない仕事をストップし。
4時間かけて東京に行くことを見直し。
場合によっては、子育てしやすい環境に引っ越し。
仕事内容もリセットとリニューアルを。
もろもろ、今までのことを「終わらせる」。。。。


実際には、何も終わらせず、どうすればよくなるかと、どんどん仕事や考え方をプラスしていく一方。
その結果、やることは増え、時間を奪われ、ついには、ダウンしてしまったのです。
フリーランスには、産休育休もなければ、企業からのメンターやキャリアコンサルタントのサポートもありません。
私と環境や事情が違う方でも、「走り続ける人」に起こりがちな悲劇かもしれません。

ブリッジズのトランジション理論

私が、この「終わらせること」の重要性に着目したのは、キャリア理論家のウィリアム・ブリッジズの「トランジション」という本を読んだことに起因します。
このトランジション理論は、キャリアコンサルタントの資格を取得したときに学んだのですが、そのときは、「ふーん、そうなんだ」くらいの理解でした。
以下のような理論です。

転機=トランジションは、終焉から、中立圏を経て、開始に至る。
すなわち。。。

第1段階 終焉(何かが終わる時)
進学、就職、結婚、異動、失業など、これまで慣れ親しんできた環境・人間関係・役割等が変化することにより、混乱や空虚感を感じる時期。何かが終わるときというのは、自分の意志で終わらせることもあれば、外部環境により終了させられるときとがある。

第2段階 中立圏(ニュートラルゾーン)
内的な再方向づけの時期で、転機をどのように受け入れていくのかという問題に直面し、喪失状態・深刻な空虚感を感じる段階。このプロセスは長く、進むべき方向がわからず、ただ立ち止まっているような感覚に陥る。

第3段階 開始(何かがはじまる時)
新しいアイデンティティを獲得し、新しい生活、生き方が始まる時。
安全で慣れていた環境から離れることへの恐怖心から内的抵抗があったり、周囲の反対があるなど、乗り越えるべき困難が訪れることもある。

終焉から、中立圏を経て、開始に至る。
キャリアコンサルタントの試験対策としては、この一文とブリッジズの名前が一致していればよかったので、深く考えませんでした。

ところが、再び自分のトランジションを感じる昨今、手に取った、ブリッジズの本から、今までのことの答えがここにあると感じたのです。
その内容は、調査や理論に留まらず、非常に血肉が通った、生々しい内容でした。
人々が、それぞれのトランジションに対して、もがき、苦しみ、それでも道を見出していいく過程が描かれているのです。
読み進める中で、転機に際して大切なことは、3つだと感じました。

自分がトランジションのただ中にいることを意識すること

何を変えなければならないか、何を終わらせなければいけないかという事に向き合うこと。

そして、ひとつひとつ納得のいく形で行動すること。



トランジションの本から、ブリッジズの言葉を抜粋します。

新しい何かになるためには、現在の自分であることをやめなければならない。物事を新しいやり方で始めるためには、現在のやり方を、終わらせなければならない。
そして、態度やものの考え方を新しくするためには、今の古い形を手放さなければならない。後退するように聞こえるかもしれないが、「終わり」は、常に最初にやってくる。
はじめになすべきは、「手放す」ことなのである。

トランジション ウィリアム・ブリッジズ著 PanRolling

私らしい<終わらせかた>を身に着ける

そもそも、「終わらせる」ことに関して、得意は人と、不得意な人。
また、能動的な人と、受動的な人がいると思います。
また、終わったことに執着していまう人、さらりと次のステージにいく人も。
これも、個性ですね。

私の場合は、捨てるのは苦手であり、意外かもしれませんが変化に際しては受動的。
何かドン!と背中を押してくれることがないと、なかなか動きません。
なので、ブリッジズでいうところの、ニュートラルゾーンの時間が長い。
けれど、一度終わらせたら、ひきずることなく次に向かえる。
皆さん、いかがでしょうか。
「終わらせること」「捨てること」に長けていますか。
もちろん前提として、「終わらせること」を見極める力も必要ですね。

個性が反映される「終わらせ方」。
でも、終わらないと次が始まらないとしたら。
そこは、軽やかに飛び越えていきたいところでもあります。
まずは、自分の終わらせ方のクセを知り、必要に応じて、意識して変えてみることも必要ですね。

始まりはさりげなくやってくる

終焉、中立圏を経て、いかにすれば「始まり」に至ることができるのでしょうか。
ブリッジスによると、それは
大半の新たな始まりは、それとなくあまり印象に残らない形で始まる
ということだそう。
ただし、ブリッジズ曰く、
そのさりげない始まりは、鍵と鍵穴のように、準備できている人に対してやってくる。
そこが一致したときに、ドアが開き、すべてのことが、まるで台本に書かれたように起こり始める。
それは、音楽の中に、新しい主題が導入される時や、そよ風の中にそれまでと違う香りが漂ってくる時の感じににている。

とのこと。
しっかりと終焉で何かを手放し、中立圏で自分を見直し、準備ができた人のもとに、「始まり」がやってくるのですね。
そして、次の一文も、心惹かれました。
結局始まるのは「私」の人生の新しい章である。私が別の人間になるのではない。
トランジションプロセスは、本当は、人生航路の中のひとつのループ(輪)なのである。少し本流から外れて、しばらく遠ざかり、そしてぐるっと回って戻ってくるのである。

毎日の生まれ変わりの中で

なるほど。
自分の人生航路のループをぐるっと一周して戻ってくる。
そう思えば、安心してトランジションを迎えられる。
そして、ループがこんがらがって停滞しないよう、やはりトランジションの中にいることを意識することが大切なのだと思うのです。

終焉、中立圏を経て、開始に至る。
このブリッジスの考え方は、人の一生にもなぞられるし、一日一日だって、これを繰り返しているようにも思えます。
夜、寝る時に終焉を迎え、寝ている間に、整理と休養をおこない、目覚めと共に、新しく生まれ始まる。
そんな一日一日の「終わり」を、きちんと「終わらせる」ことで、自分の状態をいつも把握しコントロールできるようになるかもしれません。
自分が今、どのようなトランジションいるのか、いないのか。。。。
感性を研ぎ澄ませていたいですね。

そして、最後に、ブリッジズのこの言葉を借りて、自分自身の励みにしたいと思います。

何かになろうとするよりも、何かをやってみることだ。

私たちのトランジションが、なめらかにステップをたどっていけますように。
今日という「プロセス」を大切にしていきたいと思います。

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この記事を書いた人

藤崎 晶子のアバター 藤崎 晶子 ブランディングコンサルタント・セカンドキャリアコーチ・国家資格キャリアコンサルタント

食品、外食、化粧品のブランドマネージャーを経て、2001年より独立。オリジナルメソッドで、イメージコンサルタント養成、独立起業ブランディング、また、企業研修、講演などをおこなう。
多忙な中での高齢出産後、自身のブランディングに迷い、体調まで崩すことを経験。どのような時でも、「その時の自分」を真摯に見つめ認め、「持てる経験を価値にするブランディング」の大切さを痛感する。2020年よりコーチング、ブランディングの仕事を本格化。
現在は、セカンドキャリアのサポート、あいづち道場の主宰、ブランディング×キャリアデザインで、組織・サービス・人の【らしさを言葉に形に】することをサポートしています。

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